施工例りんくう
プレジャータウン
シークル

りんくうプレジャータウンシークル

商品名ヨドルーフ166ハゼ

緩やかなカーブを描く屋根が象徴的なりんくうシークル。この3次元デザインの屋根を実現したヨドルーフ166ハゼ。折板構造の新たな可能性に挑戦した、ヨドコウの技術を紹介します。

これまで実績の無かった屋根のデザイン

シークルの屋根及び外壁の施工の話が竹中工務店から持ち込まれたのは、平成19年5月のこと。最初は設計パースだけが提示され、低コストで止水性、意匠性を保てる仕様の提案を求められるという極めて大まかな内容の依頼だった。その設計パースのデザインは、屋根全体が大きなカーブを描き、なおかつ軒先のモール部分がR形状という3次元形状になっており、これまで経験したことのない難しいデザインだった。

営業窓口である工事グループをはじめ、商品グループ建材生産チーム、さらに協力会社を含めたプロジェクトチームで検討に入った。そこでの結論は、複数の部材を組み合わせればデザインの再現は容易だが、そのために構造が複雑になり要求される低コストと止水性の実現が難しいとなった。紆余曲折の末、それを解決するためには長尺の折板構造で考えるしかないと、過去に同様の施工実績がなく不安もあったがともかく折板で検討を開始した。使用する製品として「ヨドルーフ166ハゼ」を選定。検討を重ねた結果、折板構造で実現するためのポイントが3点に絞られた。

  1. 屋根全体の大きなカーブを再現するためには、折板を扇形状にすること。
  2. 軒先部はR曲げと水平方向が大きなカーブとなるため3次元形状の成型が必要であること。
  3. 長尺折板の端部のR曲げ加工は不可能なため、屋根の平面部と軒先のR部を別々の材料とし、且つ納まりで止水性を保つこと。

以上のことについて実現可能かどうかの検証作業を行なうことにした。まず部分的に原寸大の鉄骨下地のモックアップを作成し、実際に折板を加工し、納まりをチェックして問題があれば制作図や計算の見直しを繰り返した。実際の工事がスタートするまでの3ヶ月間は試行錯誤の連続であった。

R形状の軒先モール部分
R形状の軒先モール部分
大きなカーブを描く屋根形状
大きなカーブを描く屋根形状

製品と施工の精度が鍵

工事の様子
工事の様子

3ヶ月間の検証でようやく実現の目途が立ち施工がスタートすることになったが、今回の施工で重要なことは製品の加工精度と施工の緻密さが必要だということだった。

実際の施工では、屋根面の折板を扇形状にするための方法として、ヨドルーフ166ハゼの働き幅500ミリを軒先側はそのままで、水上側だけを約450ミリになるように、施工時に強制的に狭くする方法で対応した。そのため屋根材を取り付けるタイトフレームの割付が非常に難しく、現場作業には緻密さが求められた。

軒先のモール部分のR曲げとカーブによる製品の3次元加工と施工納まりには、これまでも経験したことのない細かい調整が必要とされた。166ハゼのR曲げは、最小半径が525ミリで通常は自動でプレス加工しているが、今回は曲げ半径が3,050ミリと非常に大きいため、専門のオペレーターが手送りでプレス成型する方法しかとれなかった。そのため、プレスする位置、プレスする数を予め計算しマーキングを行なった上で、一箇所ずつプレスした。プレス位置の僅かなズレでも仕上がりに大きなズレが生じ、最終的に納まりに支障がでるため、プレスピッチの調整に高い精度が求められた。また、プレスを行なうオペレーターの技量によっても精度が左右されるため、非常に難しい仕事となった。

技術力を結集して実現へ

屋根と外壁を合わせて工事規模が28,700m2(屋根20,000m2・軒先モール2,500m2・外壁6,200m2)に及んだシークルの施工には、協力会社の関係者も含め延べ約3,500人が携わり、検証作業を開始した平成19年5月から約半年後の、シークルがオープンする直前の11月末に完工した。3次元の折板構造という新たな可能性に挑戦した今回の施工は、特殊なR形状の意匠を持つ建築物に折板構造では不可能という常識を覆した。当初の要望通り低コスト・止水性を確保し、難しいデザインを再現できたのは、今まで様々な難工事で培ってきた技術とそれを成功させてきた実績によるものだといえる。

「営業マンの誰もが思うことですが、お客様のご要望にお応えできて、感謝と信頼の言葉をいただいたとき、さらなる難題があってもそれに立ち向かって行こうという意欲が湧いてくるものです」と今回の物件を担当した吉宮主任は言う。

模型

プロジェクトメンバーを100%信頼していた

株式会社淀川製鋼所 営業本部 本社建材部 工事グループ 大阪チーム主任 吉宮 洋(よしみや ひろし)

株式会社淀川製鋼所
営業本部 本社建材部
工事グループ 大阪チーム主任
吉宮 洋(よしみや ひろし)

営業活動にあたっては、素材から製品、施工まで一貫して対応できるのがヨドコウの特徴です。その強みを生かして情報提供や対応のスピード、精度をあげることで、物件の全体像をいち早く把握でき事業主やゼネコンのニーズを的確に汲み取り、それに応えることができます。今回の物件については、正直なところ営業活動の段階から不安は尽きませんでした。折板の加工、施工の難易度からみて、私がこれまで関わってきた物件の中でもかなり難しい物件でした。うまく進まず不安になった時もありましたが、技術的にも経験的にも豊富な実績を持っているメンバーと一緒にやっているのだから、100%信頼していました。

今回の物件は、折板屋根材の可能性を拡げたという意味で、施主、設計事務所、ゼネコンに対して大きなインパクトを示すことができ、ヨドコウブランドを高めることができたと思います。今後も積極的に新しいことにチャレンジしていきます。

*所属・役職等は取材当時のものです。

りんくうプレジャータウン シークル

平成19年12月、大阪府泉佐野市りんくう往来南3番地に誕生した、2階建ての大型複合商業施設(ショッピングモール)。71,000m2余の敷地に、物販、飲食など84店舗が入居しているほか、関西国際空港を望める露天風呂付き24時間営業の温浴施設と大観覧車(高さ85メートル)も有している。 最寄り駅は、JR関西空港線または南海空港線「りんくうタウン」駅。

事業主体 大和ハウス工業(株)
設計・施工 (株)竹中工務店
屋根・外壁施工 (株)淀川製鋼所 本社建材部工事グループ
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