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1924年(大正13年)の竣工から、
本年で90周年を迎えたヨドコウ迎賓館。

国の重要文化財にも指定されている
当館の魅力を、記念すべきこの時に
改めてご紹介いたします。

 ヨドコウ迎賓館の来歴

1918年(大正7年) 基本設計終了
1923年(大正12年) 着工
1924年(大正13年) 上棟/竣工
1935年(昭和10年) 実業家の所有となり別荘として使用
1947年(昭和22年) 蒲ю製鋼所の所有となり社長公邸として使用
1959年(昭和34年) 貸家となり米国人が住む
1971年(昭和46年)
〜1973年(昭和48年)
淀川製鋼所独身寮として使用
1974年(昭和49年) 国の重要文化財指定
1981年(昭和56年) 調査工事
1985年(昭和60年)
〜1988年(昭和63年)
保存修理
1988年(昭和63年) 完工
1989年(平成元年) 「淀川製鋼所迎賓館」として一般公開
1995年(平成7年) 阪神・淡路大震災により一部破損
1995年(平成7年)
〜1998年(平成10年)
調査・修理工事
1988年(平成10年) 完工/一般公開再開
90年の時を経ても色褪せないライト建築。
 兵庫県の芦屋川上流、緑に包まれた小高い丘の上に建つヨドコウ迎賓館。旧帝国ホテル建設のために来日した近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(米・1867〜1959)によって、神戸・灘の酒造家である山邑太左衛門の別邸として、1918年(大正7年)に設計されました。
 山邑氏がライトに設計を依頼した経緯は、山邑家の娘婿で政治家の星島二郎(ほししまにろう)が、ライトの弟子である遠藤新(えんどうあらた)と親友だったことから山邑氏にライトを紹介したようです。
 その後、ライトは急遽帰国しますが、実施設計・監理を引き継いだ遠藤新と南信(みなみまこと)らの手により、1924年(大正13年)に完成を迎えました。
 当社がこの建物を所有することになったのは、1947年(昭和22年)のこと。山邑家から実業家の手に渡っていたものを社長公邸として購入し、その後貸家や独身寮として使用していました。しかし老朽化が激しくなったため、同敷地内にマンションの建設を計画しました。ところが、その情報を知った建築界から保存を要望する声が上がり、その要望に応え、当社はマンション建設計画を撤回し、保存を決定いたしました。
 さらに1974年(昭和49年)には、大正時代の建物として、また鉄筋コンクリート造の建物として初めて国の重要文化財に指定されました。
 1985年(昭和60年)からは保存修理工事に着手、完工翌年の1989年(平成元年)、「淀川製鋼所迎賓館」として一般公開を開始しました。その後、阪神・淡路大震災の影響で建物が破損しましたが、約3年間かけて災害復旧工事を実施、1998年(平成10年)に一般公開を再開しました。
 現在も、当時の姿を今に伝える貴重なライト作品として、多くの方々が来館されています。

 芦屋の地に建てられたライトの作品
芦屋の自然と一体化した異色の傑作。
 ライトは、「有機的建築」を標榜し、主に住宅建築に数多くの傑作を残しました。「有機的建築」とは、一言で言えば自然と融和する建築でありヨドコウ迎賓館にも、その建築思想が息づいています。
 敷地(4700u)は南北に細長く、ゆるやかな南傾斜になっています。建物はその山肌に沿うように階段上に建てられているため、全体としては4階建てでありながら立面で見るとすべてのフロアが1階または2階建てになっており、地面から遠く離れている感じがしません。ライトにとっては「土地と建物の一体化」という建築思想を表現できる理想のロケーションだったと言えます。
 ライトは1910年頃まで、アメリカ中西部の草原地帯に自然と一体となる地を這うような「草原住宅」と言われる様式の住宅を数多く建設していました。ライトはヨドコウ迎賓館の建設にあたり、ある夏の日に芦屋の地を訪れた際、亜熱帯のような気候と理解したようです。そのため、ヨドコウ迎賓館を草原住宅とは異なる真夏でも快適な居住性を実現するシェルター型のRC(鉄筋コンクリート)造の住宅として設計しました。同時期に建設されたロサンゼルスのエニス邸やバーンズドール邸など、非常によく似た建物もありますが、ライトの全業績の中では数少ない避暑を目的とした住宅作品であり、異色の傑作とも言われています。
建物への期待を高める演出。
 ヨドコウ迎賓館には、芦屋の高台ならではのロケーションを生かしたライトの巧みな演出が見られます。そして、それは建築の内部に入る前からすでに始まっているのです。
 阪急電鉄の芦屋川駅で降りると丘の上に佇む洋館が見えます、迎賓館は南北に建てられているため、ここからは建物の全景は確認できません。芦屋川沿いの道を歩いて川上へと進み、続いて芦屋川に架かる「開森橋」を渡って左折し、「ライト坂」と命名された勾配の厳しい坂道を上っていくと、坂の途中にヨドコウ迎賓館の入り口があります。ただし入り口があるのは敷地の最北端。右手に見える建物の外観を鑑賞しながら長いアプローチを抜けて、敷地の南端にある玄関へたどり着くようになっています。アプローチを進むにつれて芦屋の景色が徐々に姿を現し、玄関前のバルコニーからは、芦屋市街と海が鮮やかに目に飛び込んできます。柱や壁が額縁となって芦屋の街並を切り取り、それはまるで玄関に飾られた美しい絵画のようです。
 建物に入るまでの訪問者に向けた演出。これも、ライトが狙ったヨドコウ迎賓館の魅力の一つと言えます。

芦屋川駅から見たヨドコウ迎賓館

ライト坂 看板

玄関までのアプローチ

絶景を切り取るバルコニー
芸術と文学の街「芦屋」
 兵庫県芦屋市は、神戸と大阪の中間辺りに位置する自然豊かな住宅地です。明治時代の鉄道網の開通と共に芸術家や文化人が移り住み、西洋文化の影響を受けた「阪神間モダニズム」と呼ばれる生活様式が築かれました。芦屋にはこのような独自の文化の面影を残す建築物や美術館、文学者たちの足跡が数多く残っています。歴史に彩られた優美な街並みは、ライト建築との相性も抜群です。

約250本の桜並木が続く芦屋川

 ヨドコウ迎賓館館内・1F
自然のリズムを刻み込む幾何学模様の外観。
 アプローチから建物の外壁を見上げると、大谷石による幾何学模様の装飾に出合えます。四角形や三角形などシンプルな形が一定のルールで幾何学的な模様にアレンジされており、同じパターンを繰り返すことで、ライトは自然のリズムを刻もうとしたと言われています。やわらかくて加工しやすい大谷石は、ライトの要求する装飾に適した素材だったようで、旧帝国ホテルをはじめ日本での彼の作品のほとんどに使用されています。

入口を狭くすることで室内の広がりを演出。
 玄関のドアは、小ぶりで大人一人が通れるほどの幅しかありません。これは入口を狭くすることで中の空間を広く感じさせるというライトが好んだ手法です。

車寄せ上部の装飾

アプローチの植栽

玄関

大谷石の装飾と美しい眺望が出迎える1階車寄せ

 ヨドコウ迎賓館館内・2F
日本の気候に配慮した無数の小窓。
 階段を上るとまず迎えてくれるのが応接室。1階の玄関と同様、狭い入り口を抜けると、広々とした空間が広がります。北側には大谷石の暖炉が配置され、左右対称の端正なデザインとなっています。一方南側にはバルコニーがあり、ここからもすばらしい景観を眺めることができます。
 またこの建物の特徴の一つである壁の上部に取り付けられた無数の小窓は換気を目的としており、湿気の多い日本の気候に配慮されています。(現在はガラスがはめられています)

豊かな生活を演出するインテリア。
 東西には大きなはめ殺しの窓が配置され、その下にある造りつけの長椅子では、四季折々の美しい景観が楽しめます。  応接室の壁面には飾り棚や置台が多数しつらえてあります。ライトは室内の装飾により、生活の中に潤いを演出しようとしたようです。(テーブルとイスは当社が制作)

飾り棚の装飾

応接室暖炉の装飾

応接室の照明

ライトのインテリア思想を物語る2階応接室

 ヨドコウ迎賓館館内・3F
植物の葉がモチーフの飾り銅板。
 3階廊下の大きな窓には飾り銅板がはめ込まれており、西日によって葉の隙間から射し込む木漏れ日のような効果を演出します。この銅板は自然との調和を目指したライトが植物の葉をモチーフにデザインしたもので、自然のグリーンに近づけるために、銅に緑青というサビを発生させています。

三間続きの畳敷き和室。
 3階には三間続きの和室があります。当初のライトの設計には盛り込まれていなかったのですが、施主の強い要望を受け、弟子の遠藤新・南信の配慮で実現したようです。ライトはヤード・ポンド法でこの建物を設計し、弟子たちは日本式の尺貫法で和室を設計したようですが、その誤差は壁の厚さで調整が図られたようです。前述の飾り銅板を使用した欄間が印象的です。

3階西廊下1

3階西廊下2

和室欄間の飾り銅板

和と洋が融合する3階和室

 ヨドコウ迎賓館館内・4F
荘厳なイメージの食堂。
 最上階の食堂は館内で最も装飾性に富み、洋風そのものの佇まいです。食堂は儀式の空間であるという欧米の思想に基づき、中央部分が最も高くなる船底型の天井など教会の内部を思わせる厳粛な空間となっています。  壁に取り付けられた木製の飾りが独特な雰囲気を醸し出しており、天井の小窓からは昼間は光が差し込み、夜間は星空を眺めることができます。

心地よい風が吹き抜ける広大なバルコニー。
 食堂の南側には、パーティーが開けるほど広いバルコニーが広がります。眼下には六甲の山並みから大阪湾まで一望できるすばらしい眺望が広がります。

 迎賓館では様々な装飾と共に、ライトの空間構成をぜひともお楽しみください。

4階暖炉の装飾

4階バルコニー

バルコニー周辺の装飾

バルコニー周辺の装飾

装飾性豊かな洋風の佇まいが美しい4階食堂


90周年を迎えて
 当館は90周年を迎えましたが、震災など数度の危機を乗り越えて、建築当初の姿を守ることができたのは、多くの方々のご支援の賜物と深く感謝しております。今後も保存・維持に努め、この建物を通じてライトのデザインや建築思想を皆様にお伝えすると共に、将来様々な活用方法も検討していきたいと思います。ぜひ当館へ足を運んで頂ければ幸いです。

館長 山元勝彦


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