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国指定重要文化財
フランク・ロイド・ライト設計
神戸大学 発達科学部 人間行動・表現学科 造形表現論講座
今号では、神戸大学 発達科学部 人間行動・表現学科 造形表現論講座の皆様をご紹介します。ヨドコウ迎賓館には2年生の環境デザインの授業の一環として来館され、見学後は雑誌の編集という視点で「ヨドコウ迎賓館の小特集」をまとめることを想定してレポートを作成されています。
そこで、ご指導に当たられている梅宮助教授にテーマ設定の理由をお伺いすると共に、学生代表の方に、特に関心を持たれた点について要約していただきました。
授業でヨドコウ迎賓館に来館された皆様
(玄関車寄せ前で撮影)

ヨドコウ迎賓館は、街の「物語」の核となる存在
梅宮 弘光 助教授
(学術博士)
人と街とのよい関係は、まずその街に関心を抱くことから始まるように思います。そこで鍵になるのが、街の「物語」です。道路や建物をハードな環境とすれば、それを舞台に展開する物語はソフトな環境と言えるでしょう。そして、自分もその物語の一番新しいページの登場人物の一人なんだと感じられた時、人はその街に愛着を感じ始めるのだと思います。
私は担当授業で、学生達にこの「物語」の重要性を伝えたいと思ってきました。しかし、利便性のみが追求されがちな現代都市において、物語は成立しにくくなっています。だからこそ、物語を紡ぎ出す核となる存在が重要です。
そのような時、ヨドコウ迎賓館が身近にあることは幸運でした。この建物をめぐっては、設計者・施主・風景・歴史とさまざまな物語が展開します。
学生と共にこの4年ほど毎年伺っていますが、彼らがここに足を踏み入れた時に、そうした物語の舞台に自分も立っていること、物語はまだ続いていることを実感してほしいと思っています。
ヨドコウ迎賓館
とライト坂
ライト坂の起点
開森橋周辺
(昭和36年)

文学作品を手がかりに、建築当時の風景を思い描く。
■伊藤 亜樹さん
ヨドコウ迎賓館のある芦屋川流域は、古くから文学にゆかりが深い地です。そこで私は、建築当時の周辺環境を探る手がかりになるのではと、大正時代の作品を調べてみました。徳田秋声は小説『蒼白い月』で、芦屋川の風景を「河原も道路も蒼白い月影を浴びて真白に輝いていた。道路の傍には松の生い茂った崖が際限なく続いていた」と表現しています。また、詩人の柳沢健は芦屋浜を「黄昏の海を見てゐると、味のいゝ葡萄酒の匂がする」と詠っています。この建物からは海に続く芦屋川が見下ろせますが、こうした幻想的な情景を思い描きながら眺めるのも感慨深いものです。

ライト建築への疑問を解く鍵は、六甲山の変貌。
■井上 芽久美さん
遠くから仰ぎ見た時、石造り風の建物と背景に連なる緑豊かな六甲山が調和していない気がしました。なぜライトは、このような外観にしたのだろうか…そんな疑問を持ち、六甲山の変貌に着目しました。すると昔の六甲山は、禿山同然であったことが判明。ライトが芦屋を訪れたのは、※1砂防のための植林が始まって間もない頃だったのです。花崗岩の白い岩肌がむき出しになった六甲山が背景なら、※2大谷石の色合いや質感が遠目にも暖かい表情を醸し出していたのではないでしょうか。

日本に名だたる住宅地 芦屋の歴史を散策。
■武田 僚子さん
まさに邸宅と呼ぶにふさわしいヨドコウ迎賓館の訪問をきっかけに、日本に名だたる住宅地芦屋の成り立ちに興味を覚えました。発展の基盤となったのが、鉄道の開通です。明治38年に阪神電鉄が開通。大正2年には国鉄芦屋駅が新設され、同9年に阪急電鉄も開通。山邑家の別邸として使われていた大正末期から昭和初期にかけては、農村から別荘地、さらに郊外住宅地へと様変わりする途中でした。あれから約80年、この建物は当初の姿を留め、芦屋の歴史散策へと私達を誘ってくれます。
現在の阪神芦屋駅(平成15年)
大正時代の阪神芦屋駅(大正4年頃)

いにしえの酒造家が貢献した地域文化の足跡を辿る。
■月ヶ洞 絢子さん
この建物の設計をライトに依頼したのは、櫻正宗の銘柄で知られる神戸・灘の酒造家、八代目山邑太左衛門氏です。氏は白鶴酒造の七代目嘉納治兵衛氏達と共に、灘中学校・高等学校の創設にも関わったそうです。豊かな資産が地域に還元され、街全体の文化形成に繋がっていったと言えるでしょう。いにしえの酒造家の文化的貢献に思いを馳せ、芦屋から神戸界隈へと足跡を辿ってみるのも一つの楽しみ方だと思います。

当時の写真資料:兵庫県芦屋市広報課提供『芦屋今むかし』より
※1土砂災害を防ぐため、明治35年から本格的な植林事業を開始
※2大谷石は内外装に多用され、日本におけるライト建築を特徴づけている石材

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